アメリカ大統領選とEVは、非常に深い関係性があるのです。 

 11月3日に4年に1度の大勝負を控える超大国。
 4年前、「泡沫候補」と揶揄されたのが嘘のように見事勝利を掴んだドナルド・トランプ大統領。
トランプ大統領が当初から掲げていた、メキシコ国境の壁建設やTPP(環太平洋経済連携協定)・パリ協定の国際条約や連携から離脱するなど自国優先政策によって、4年間でアメリカは大きく変化しました。

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 他の批判を許さず、フェイクニュースと声高にツイートする断罪手法によって、アメリカ国民の分断を扇動する大統領の手法は、就任以来強い批判を浴び続けています。
 そんな混沌ひしめくアメリカは中国に次ぐ世界第二位の自動車市場です。グローバル自動車メーカーにとって、アメリカ・中国はまさに屋台骨として収益構造の大多数を占める市場です。確実な利益を稼ぐべく、彼らは両国の自動車政策の一挙手一投足を血眼になって凝視しています。

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 オバマ前大統領が推進していた環境政策に起因するハイブリッド車両やEVの優遇政策から一転し、トランプ大統領は燃費基準と温室効果ガス排出基準の緩和方針を打ち出しました。その結果、GMやトヨタ、FCA(フィアットクライスラー)は世界で最も厳しい排ガス基準を設けるカリフォルニア州の規制に従うことを凍結し、この緩和方針に歩調を合わせています。
一方でフォードやホンダ、VWはカリフォルニア州との間で排ガス削減を目指す取り決めを締結しています。図らずとも自動車業界ですらトランプ大統領による分断を受け、その渦中にはEVをはじめとする環境対応車両がいる構図です。  

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 一方、今回の大統領選で優勢が伝えられている民主党のバイデン候補は、環境政策に対して積極姿勢です。民主党候補を確実とした7月の演説では、脱炭素社会に向けた投資を4年で2兆ドル(200兆円)実施すると打ち出しました。
9月のテレビ討論会でも、再生エネルギー利用への移行やパリ協定への復帰を明言しています。EVにフォーカスすると、連邦政府所有の車両のEV化を促進し、EV購入や充電機器の拡充に関する新税制優遇を導入するとしています。

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 バイデン候補が当選した場合に、カリフォルニア州のゼロエミッションビークル(ZEV)規制を復権させ、トランプ政権での燃費基準と温室効果ガス排出基準の緩和方針を撤回する可能性があります。トランプ政権では罰金を撤廃しましたが、バイデン政権下ではメーカーが燃費基準に違反した場合、巨額の罰金を支払う可能性もあります。アメリカの自動車業界では上述のように、バイデン候補の勝利に備えて燃費規制の再強化とEV優遇方針の可能性に向けて、準備を整えています。

 このように一見関係無さそうにも見える大統領選と電気自動車ですが、販売台数1700万台を誇る世界第2位の巨大自動車市場であるアメリカにおいて、その未来は意外にも来月の選挙にかかっていると言っても過言ではないのです。
 しかし、気を付けなければいけないのは、バイデン候補の政策は非常にEVにとっては追い風ですが、それはあくまでもEVに限った話です。個人消費がGDPの7割の「消費超大国」は、バイデン候補の唱える脱炭素社会の構築だけでコロナ禍を超克できるほど生易しいものではないでしょう。 
 
 トランプ大統領劣勢の報道もありますが、「何が起こるかわからない」ことを、アメリカ国民は4年前にも経験しています。目前に控えた大統領選、少し違った目線で結果を見守ってみてもよいでしょう。